なぜ、生きるのか

S.T20代男性

震災時居住地:福島県伊達市

現居住地:福島県

タグ: 福島

大学卒業後、福島県のために働く選択をした私は、日々、そんなことを考えていた。
忙殺される毎日に嫌気がさしていたのかもしれない。
同僚と東日本大震災・原子力災害伝承館に行く機会があった。晴れた日の昼下がり、ドライブ気分の一行が三春町から田村市を抜け、「そのエリア」に近づいたときのこと。民家の庭から野生の猿が飛び出してきた。「本物の猿だ!」と陽気な車内が、次第に見えてきた車窓からの光景に、重苦しい空気へと一変する。私たちは絶句した。
「今まであの大震災の、原発事故の、福島県の何を見てきたのだろう」
被害がほとんどなかった地域出身の私を含め、どこか遠い国の出来事程度に考えてる県民は少なくないのではないか。あまつさえ、見て見ぬふりをしている人も。
一度、多くの人にその目で見てほしい。切実にそう思った。
「なぜ、生きているのか」
あたかも生きていることが当たり前であるかのような、傲慢さを覚えた。
だから、私はこう考えることにした。
「なぜ、生かされているのか」
困っている人に寄り添い、助けることができる力が欲しいと心から思った。
この先の人生で体現していこう。3.11が私にさせた、10年目の決意だった。