「忘れてはいけない」

渡邊千鶴子

現居住地:東京都

2011年3月 被災地から板橋区に避難して来られた方々の中にIさんがいました。90才を超えたお母様と2人で、家ごと津波に流されて、それでも奇跡的にヘリコプターで救助されたという話に衝撃を受けました。
 旅行が好きで、花が好きで、食べることが好きで、書道が得意なIさんは私と同じ故郷の言葉で話します。震災がなければ出逢うことのなかったIさんとは、絵手紙を習ったりランチをしたり、台湾旅行に行ったりと、楽しい時間を過ごしてきました。
 震災から10年という時間が流れましたが、Iさんはこの新しい地域に馴染もうと努力し一生懸命に自分らしく生きようとしています。あの震災がなければ今も故郷で、自分の車で温泉巡りをしたり、庭で大好きな花をたくさん育てられたでしょう。
 今まで築いてきた暮らしを一瞬にして奪われてしまうということを、自分の身に置き換えて、何度も何度も考えてみました。Iさんだけではなく被災された多くの方々が、そんな絶望的な苦難を強いられているということを私達は決して忘れてはいけないのです。